僕の最初の設計は両親の家でしたが、じつを言うとこれは僕の最大の失敗作でもありました。まだ22歳の若造で、建築のことを何も知らないくせに、自意識過剰の格好ばかりの家を建てちゃった。動線計画は悪いし、生活に対するキメ細かな配慮もぜんぜんなかった。両親は正真正銘の犠牲者です。相当住みにくいはずだけど、さいわい呑気な人たちで、さほど気にしてもいなかったようなのが救いでした。でもねえ、九十九里浜に建てたその家が、飛行機で成田空港を離着陸するときに窓からよく見えるんです。そのたびにサッと血の気が引いて、慙愧(ざんき)に身悶えした。「お父さん、お母さん、ごめんなさい!」って。その失敗でもう反省して、基本からやり直そうと、20世紀の住宅建築の傑作をじっくり勉強し直すことにしたんです。

- 中村好文 -

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