10年前、病気で倒れ、一時は危篤状態に陥りました。それから1ヶ月間入院しました。退院した日のことは忘れられません。雨が降っていて、銀杏の葉が黄色に染まり、入院前とは景色がガラリと変わりました。路傍に咲く、名もない花の美しさに目を奪われながら、これまでこんなふうに周囲の景色を感じたことはなかったなとつくづく思いました。ガムシャラに走り続けてきた毎日から、命を失うかもしれない状況に陥って歩みが止まったとき、スッと力が抜けた。そうしたら、いままでは視界に入っていなかった世界が、突然、鮮やかに目に飛び込んできたのです。
- 中鉢良治 -
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