南米大陸最高峰のアコンカグア、北峰六九六〇メートルに立ったのは午後二時十五分であった。やったぞ、やったぞ!プラサ・デ・ムーラスを出発してわずか十五時間十五分。きょうまで誰がこんなスピードで登ったろう。登山はタイムを争うスポーツではないから、こんなことにどんな意味があるかと思ったりはするが、こうしてひとつの目標に向かってすべてを傾けるのはすばらしいことだ。北側にゆるやかな曲線を描くメルセダリオ峰を見下し、頂上に立ったときは疲れも忘れ、心はすごくいい気分だ。
- 植村直己 -
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