孫子や呉子は軍学に巧みではあるが、その業績は、学ぶに足りない。たとえば、上州筋の夜討や強盗の類にも、それぞれの法則はあるものである。夜討には、松明の振り方が大切であり、強盗の中でも、頭だった老巧の者に松明を振らせるのである。その振りようが悪い時には、働きも面白くない。だから、松明を振る役が大切であって、相手のほうも、松明を振っている者を目がけて、それを討ち取るようにしている。こういうことは、武士の心得にもなることであって、夜討強盗の所業にも、良いことがないとは限らない。けれども、夜討や強盗は、大きな悪事である。孫子や呉子も、このようにして、採るべきところを採り、捨っべきところを捨てたのである。
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